次世代教育　（第3回）

第3回：エリートの卵たち--アメリカ難関私立高校生

斉藤克明（さいとうかつあき）

11981年より一貫して海外の初等・中等教育コンサルティングに携わる。1999年、中学・高校留学ガイドを出版。 2001年、日本人初のアメリカに本部を置くIECA(教育コンサルタント協会）のメンバーとなる。E-Concierge代表取締役、海外留学協議会副理事長。

（2009年10月1日掲載）

私は年に数回、海外の学校を入学希望のご家族と共に訪問します。
その理由は英語圏のボーディングスクール（寮制私立校）はＡＯ方式の入試を実施していて、
入学難易度が高くなればなるほど、面接（インタビュー）を重視する傾向があるからです。

一昨年の１０月、コネチカット州にあるチョート（正式にはチョートローズマリーホール）を訪問したおり、いつものことですが、その施設の大学並みの広さ、充実さ、そして美しさに私の心は躍ります。
そして、そこで接した生徒は特に印象に残っています。
「アメリカを担うエリートの卵たちはどんな人間だろう」と私は緊張気味でしたが、
そこに現れた１１年生の男子は薄いブルーのポロシャツ、ベージュの短パンにつっかけサンダル、リラックスカジュアル（？）姿でした。
私はデイビッド（仮称）君に、進学予定校と将来の職業について質問しました。
ところがいずれも明確な答えがないのです。

齊藤：　アイビーリーグに進学を考えていますか?

デイビッド：　まだはっきりとは決めていません。

齊藤：　１１年生（高２）ですから進学に向かって計画を立てる時期ではないですか。

デイビッド：　カレッジカウンセラー（進学相談担当者）からアドバイスをもらって決めようと思っています。

齊藤：　大学ではどのようなことを学びたいのですか。医学部、ビジネス、法律、あるいは理工科系専門分野？

デイビッド：　まだ決めていません。

齊藤：どんなことに興味がありますか？

デイビッド：　ＩＴ関係に興味があります。

齊藤：　入社したい会社はどこですか？

デイビッド：　今のところ特にはありません。

故ケネディ大統領を輩出しアメリカ屈指の進学実績を誇り、寄付総額が２００億円を超える、
超進学校の生徒の実際は、私が想像していたよりも、はるかに「普通」でした。
質問に正確無比に答える機転と俊敏さ、母校の歴史や実績などの膨大な知識、
そして、自分の将来を合理的に語るいわば大人に慣れているといった態度などなど、
私は、変身後のスーパーマンのような生徒をイメージしていたのだと思います。

私はデイビッド君に大変好感を持ちました。
彼と一緒にいると落ち着くのです。のんびりした態度と語り、細かいことは気にしないすっとこどっこい性に、素直な若者を感じ、安心するのです。

デイビッド君はクラーク・ケントそのものなのかもしれません。

日々たくさんの宿題や課題を課せられ、膨大な読書量をこなす。
スポーツ、文化、社会活動もこなす。
それでも人を安心させてくれる。

世界にはそんなスーパーマンの卵がたくさんいて、それを見出し支えている教育がある。
デイビッド君がいつかケネディさんを超え、世界のリーダーになるかもしれません

超難関ボーディングスクールの一つ、Deerfield Academy