次世代教育 (第41回)
第41回:迷える青年 (3)
株式会社E-Concierge
代表取締役
斉藤 克明 (さいとう かつあき)
11981年より一貫して海外の初等・中等教育コンサルティングに携わる。1999年、中学・高校留学ガイドを出版。 2001年、日本人初のアメリカに本部を置くIECA(教育コンサルタント協会)のメンバーとなる。E-Concierge代表取締役、海外留学協議会副理事長。
(2012年7月1日掲載)
ニュージーランドに2週間滞在し、現地の学校に通い、
その生活や学校での勉強の要領も体験し、自分の英語力不足も
実感した青年は、自分の兄や姉が留学していることもあり、
自分もその決意を固めたようでした。
私の驚きは15歳のこの青年が2週間の海外体験を通じて、
「私」と打ち解けて、自分の意見を率直に述べるようになったことです。
初めて会った時のあの「無言さ」は全く感じられなくなりました。
友人を伴いオフィスに来た青年は、自分のニュージーランド体験を
その友達に語り、異文化体験をいろいろと「自ら」彼に説明するのです。
兄がアメリカのボーディングスクールを卒業する時、親と一緒に
学校を訪問している青年は、全く異なった種類の学校を見ているわけですから、
自分なりの比較検討が可能なわけです。
青年の親友に「留学」という大きな人生のイベントを勧め、
そのメリット、デメリットを検討し、さらには国による違いを
楽しそうに親友と語る青年に私は、「子どもたち」の未来の可能性を
しみじみと感じました。
親友が留学を選択してもしなくても、彼は親友に対して、自分ができる
良いと思うことをすなおに実行していことが、嬉しいことです。
もちろん、この青年のいままでのストーリーを演出したのはお母さんです。
夏休みを利用して、「留学」という不安の伴う大きな人生のチャレンジのため、
短期の体験を思いついたのも、その結果をある程度予測して、
次につなげる道を考えたのも、留学にいまひとつ乗り気でなかったお父さんに
青年が自ら、果敢に挑んでゆくその気持ちを高揚させることも、
おそらくお母さんは一連のストーリーが初めの留学相談の時には
出来上がっていたのかもしれません。
あるいは、そこまで考えていなくても、中学から高校へという進路の中で、
逡巡しているわが子にどのようにしたらベストな選択ができるか、
母の直感で彼の人生を導いているとは考えられないでしょうか。
「もう、あの子には手を焼きますよ。兄と違って、トラブルばかり、何をやっても危なっかしくて、ほんとたいへん」
―いい子ですよ、彼は。人情味があって、打ち解けると素直で明るいし、高青年。
「みなさん、そういってくれるのはありがたいことですけど・・・。」
―できると思います。お兄さんへのライバル視もありますが、自分は自分というプライドがうまく機能するようになれば、兄のまねでなくて、自分の人生を考えられるようになると思います。予算の面、彼の留学の目的などからして、ニュージーランドの選択も十分に考えられると思います。
「そうですか。息子が『留学』に積極的になったので、すこしだけホッとしています。これからも甘くはありませんけど・・・。」
青年の狐疑逡巡をテーマにブログを書こうと思っていたのですが、
やはり、青年にとってお母さんという太陽的存在を
無視して物語は考えられません。
< つづく >
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