次世代教育 (第28回)
第28回:教頭先生のおもい
株式会社E-Concierge
代表取締役
斉藤 克明 (さいとう かつあき)
11981年より一貫して海外の初等・中等教育コンサルティングに携わる。1999年、中学・高校留学ガイドを出版。 2001年、日本人初のアメリカに本部を置くIECA(教育コンサルタント協会)のメンバーとなる。E-Concierge代表取締役、海外留学協議会副理事長。
(2012年1月15日掲載)
先日、ある高校の教頭先生と食事を共にする機会を持ちました。
先生とのご縁は六年ほど前、私の息子が留学した学校に教頭先生の学校から
一年留学を派遣していたことがきっかけとなり、始まりました。
留学生のお世話を外注することになり、いくつかのエージェントがその時、
候補にあがったようですが、結局、私が留学生のお世話をすることになり、
その時以来、前職から教頭先生との付き合いが継続しています。
彼と話していると、日本の先生の多忙さがひしひしと感じられます。
教頭という立場は、読んで字のごとく教師を統括する役職と思いきや、
現場の先生のコミュニケーションはもちろんのこと、学校運営に関して、
あらたな教育システムの導入、広報、生徒募集のための営業、
海外研修への同行、はたまた、生徒のクラブ活動の顧問や監督など、
英語圏の先生と比較して四、五倍の役割と責任を一人で
担っていることは明白です。
私よりも一学年先輩の教頭先生に私は、「もう少し楽になったら・・・」と
進言するのですが、海外に行くのが楽しく、生徒との触れ合いが好きで、
現場の細事も熟知し、学校の大きな方針についても洞察が深い、
教頭先生としては、身を粉にしても動かないわけにはいかないようです。
彼は言います、「地位、名誉、お金、はいずれ消えてゆく。しかし、
生徒とのつながりは消えることはない」と。
監督として、生徒と苦楽を共にし、同じ目標のために、考え、
思考錯誤を繰り返し、皆が納得する結果を出して、胴あげをされる、
「その感動が忘れられない」先生は、天職を
全うしているように私には思えます。
そもそも、私がその学校の留学生をお世話するに至った背景には、
それまで担当だった先生が多忙のために、生徒のお世話を任せたいと
することから始まりました。
教頭先生が直接留学生のお世話をしていたわけではありませんが、
現場の先生の意見を受け止めた教頭先生の判断は的確でした。
百名以上の生徒の世話をしながら、海外の生徒や担当者と適宜、
連絡を取り、また、日本の彼らの保護者からの希望や質問にも答え、
出願、ビザ取得、渡航手配、出迎え確認、そして留学生の授業料等の支払い、
生徒が渡航してからのお世話から、送金などを一人でこなすことへの
こころの負担は相当なものです。
まして、先生は留学の専門家ではありませんから、英語が話せても、
現地の学校の慣習や常識までもすべて把握しているわけではありません。
その状況を、十分に理解し、なおかつ、学校運営にあたる理事との
折衝にあたり、留学のお世話を外注するにあたった教頭先生の
異文化に対する理解と判断に私は感服しています。
教頭先生は、若い先生と一緒にやってきました。
若い先生は、社会人から教師となったそうです。
これから、私とペアになって、その学校の留学を進めるうえでの、
キーパーソンとなると思います。
これからも元気で子どもたちのために、情熱を燃やしてほしい、
そして、ご自身のような熱き気持ちを若い先生に伝えてほしい、
教頭先生がその役を辞しても、づっと友だちでいたいと思います。
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