次世代教育 (第24回)
第24回:震災後のクライストチャーチ&スロー文明
株式会社E-Concierge
代表取締役
斉藤 克明 (さいとう かつあき)
11981年より一貫して海外の初等・中等教育コンサルティングに携わる。1999年、中学・高校留学ガイドを出版。 2001年、日本人初のアメリカに本部を置くIECA(教育コンサルタント協会)のメンバーとなる。E-Concierge代表取締役、海外留学協議会副理事長。
(2011年9月15日掲載)
8月のことですが、26日午後から27日土曜日早朝にかけて、
クライストチャーチを歩き回りました。
2月22日、前回震災当日、私はクライストチャーチにいましたが、
その時滞在したモーテル、オールシーズンは閉鎖されたままでした。
おそらく、レッドカード判定がくだされ、取り壊されるのでしょう。
カテドラルのある市の中心部に近づくと、2メートルほどの
鉄製のネットでメーンストリートが閉鎖されています。
このネットが街の中心部をぐるりと一周しているのに気付くまで、
それほど時間はかかりませんでした。
柵の周辺のビルもひと気のないところが多く、
クライストチャーチの中心地は残念ですが、街として機能していません。
街の中心を西から東に横切るエイボン川沿いにある瀟洒な住宅も
ほとんどがエバキュエート(避難)状態であり、夜になっても明かりが
ともることはありません。
また、古い教会やビルディングは、震災時に一部倒壊したため、
崩れた瓦礫がそのままになっているところも多く、
カテドラルから半径、500-1000メートルくらい、クライストチャーチの
外郭の目抜き通りを車ががんがん往来しているのと対照的に、
一歩、市内に近づくとひと気がなく、ビルのガラス窓がところどころ割れ、
静まり返った地域のいくつかの場所で復旧の作業が行われていました。
そのクライストチャーチで、元気にポップ調の音楽をかけ、
明かりを煌々とつけ営業していたのはカジノでした。
今日は日曜日です。クライストチャーチから南に200キロあまりにある、
ダニーデンでこのブログを書いています。
この街もクライストチャーチ同様、イギリスの小都市を思わせる
古風で歴史的な建物の多い静かな街です。
人々が何代にもわたり営々として築き、残してきたものが、
一瞬にして倒壊してしまう・・・。
自然はかくも厳しく、容赦なく、平然と私たちの文明を
飲み込んでしまうこともあります。
ニュージーランドを車で旅し、雪をいただいた黒にちかい
群青色の山々を右手に遠望しながら、1号線をひた走っていると、
文明開化前のこの国の様子をおもい浮かべます。
アメリカでもカナダでも、地平線の見えるような道を走っていると、
ヨーロッパ人が渡来するまえの北米大陸を彷彿します。
アメリカのネイティブの諸部族、ニュージーランドのマオリ族など
とてもスローな文明で何千年も自然と一緒に生きてきたのだと
思います。それが近代から現代になり、科学の発達で私たちは、
過去の数百倍、数千倍の勢いでファースト文明を展開しています。
それを宇宙の自然という単位で考えてみるとどうなるでしょう。
スロー、ファーストともに「一瞬」でしかないと思うのです。
同じ一瞬なら、スローで納得して過ごしたいと思います。
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